「ハリネズミはお風呂に入れてもいいの?」という質問をよくされますが、ひとことで答えられる簡単な問題ではありません。
入浴についてさまざまな意見や考えを、ハリネズミを飼っている方や獣医さんに聞いてみました。
そして、記事の最後にそれらを考慮して僕がなぜお風呂に入れるのかお話しします。
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ハリネズミの入浴について
野生で生活するハリネズミには入浴の習慣はないと言われています。
また「【冬眠する?しない?】ハリネズミの冬眠について」という記事でも触れましたが、ハリネズミが生息しているアフリカのセネガルからザンベジのサバンナ(草原地帯)では雨があまり降りません。
つまり「水に触れることが少ない」と考えられています。(もちろん水分補給はします)
これらのことから「ハリネズミは野生では入浴しないのだから、ペットのハリネズミもお風呂に入れてはいけない」と考えている飼い主さんや獣医さんがいます。
入浴の習慣がないハリネズミにとっては入浴はストレスになるのは否定できません。
しかし汚れをしっかり落とせるという大きなメリットもあります。
ハリネズミの浴び砂(砂浴び)について
一方でハリネズミは浴び砂をすると言われています。
浴び砂とは、さまざまな動物に見られる「皮膚などについた寄生虫などを落とすための行動」です。
この他にも「濡れた身体を乾かすため」や「汚れを落とすため」の行動であるとも言われています。
浴び砂には爪の間の細かい汚れなども落とす効果があります。
「ハリネズミに入浴させるべきではない」と考える方は浴び砂をさせるためにケージ内に砂場を設けています。
僕も一度浴び砂をさせてみたことがありますが、すごい勢いで砂を巻き上げるのでケージ内が汚れないような対策が必要です。
また砂がうんちやおしっこで汚れた場合はこまめに取り換える必要があります。
野生でも行う砂浴びはストレスを解消にもなると言われています。
しかし、入浴ほどは汚れを落とせません。(それで十分という考え方もあります)
結局は入浴と浴び砂のどっちが正しいの?
入浴か浴び砂、どちらが正しい選択なのでしょうか。
衛生面・清潔さを重視したい方は入浴、ストレス軽減を重視したい方は浴び砂、というのが定説です。
しかし僕なりに考えたことがありますのでお話します。
僕がハリネズミをお風呂に入れる理由
入浴の習慣がないハリネズミを入浴させている以上、多少のストレスとなっていることは承知しています。入浴させること自体が虐待だ!という意見も頂戴することがあります。
しかし我々飼い主が準備できる飼育環境での浴び砂では不都合があるように感じています。
野生では広大な大地、温度、湿度、食料、天候などの環境が整っているからこそハリネズミは生きることができます。
もしも野生と同じ環境を実現できるのであれば入浴は必要なく、浴び砂で事足りるでしょう。
しかし、どこまでいっても我々は野生と同じ環境を作り出すことができません。
つまり「人間が飼育する前提でのグルーミング方法は野生と同じではいけない」と考えています。
野生では広い大地を歩き回り、草木をかき分けたり、穴をほってもぐったり、浴び砂をしたり、時には雨に濡れたりするでしょう。
こられ全ての条件がそろった上で清潔に保たれていると考えるべきではないでしょうか。
野生で言う清潔というのは見た目の話ではありません。
土や泥はついていますが歩き回ることで身体に害のある汚れが付きにくいということです。
我々が飼育する狭く窮屈なケージの中では野生環境下と同じ条件を作ることは不可能で、衛生的に問題があります。
例え浴び砂をさせたとしても狭い砂場では本当に汚れが落とせるとは僕は思いません。
仮に砂場で排泄をして、その排泄物がついた砂を皮膚に付着させたままいたら、皮膚疾患などをわずらうこともあるでしょう。
これらのことから「目立つ汚れがある場合は入浴させる」という判断をして、事故のないよう必ず目を離さず、ストレスにならないよう長風呂させず、風邪をひかないようにしっかりふき取ることを徹底しています。
最後になりましたが、全てのペットは人間の手前勝手で「愛玩動物として飼育させていただいている」という状況です。
野生と同じ環境を準備するのが当然ですが、それが無理であればどうすれば動物にとってストレス(精神的、身体的)を感じずに生きていけるかということを考えた結果が、今ある飼育方法やグルーミングの基礎になっているべきであると思います。
こちらの動画でもお伝えしていますが、ハリネズミを無理やり泳がせる様子を撮影した動画がSNSなどで拡散されており、ハリネズミは泳ぐことができるという誤解を与えています。
入浴させる際には深く水をはらないよう、細心の注意をはらって入浴させてください。
参考になった獣医さんの意見
以前入浴についてアドバイスいただいたことをこちらでご紹介*します。*ご本人許可済み ご意向によりお名前は伏せさせていただきます。
「野生ではお風呂なんて入らないから、入浴は必要ないんじゃないか」とか「だから虐待なんじゃないか」という批判もあるかもしれませんが、野生とペットとではそもそも置かれている環境が全く違います。
免疫の話になりますが、生まれてすぐ体に入ってしまった雑菌は自己だと勘違いされて、それに対する免疫反応が起こらなくなります。
野生では雑菌に触れる機会も多く、成長してから新しく触れる雑菌が減るので(それで病気になることもあるので善し悪しはともかく)成長してから体に入った時に免疫反応を起こす雑菌が少なくなります。
ただ飼育されているハリネズミの大抵はブリーダーさんからそのまま飼い主さんへと渡るので、雑菌への耐性はかなり低いです。
また野生では触れないようなホコリや雑菌も家庭にはたくさんいますので、野生では不要なお風呂も家で飼育されている以上必要です。
ただし、ご存知の通りハリネズミは泳げず、水に触れるお風呂はストレスになります。
お湯につかる時間はなるべく短くして(長くても15分程度)あげると安全かと思います。
また濡れた体をうまく乾かすすべも備えていませんから、風邪をひかないよう丁寧に乾かしてあてください。
ご意見をくださった獣医様、本当にありがとうございました。
まとめ
ハリネズミは研究途上の動物であり、その生態は未だはっきりとわからないことも多いようです。
今後も新しい事実や発見があれば、それに合わせて飼育方法を柔軟に変えていく必要があると考えています。
すべてはハリネズミの健康と幸せのため、勉強し続けなければなりませんね。
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